杏っ子/成瀬巳喜男

だらしない夫・木村功が些か滑稽に見えてしまうのは、妻たる香川京子が余りにたくましいため。
たくましいと言ってもそこは香川京子をキャスティングしただけあって、可憐さは失わない。
これを高峰秀子がやるとやや強烈になり「あらくれ」等のようになり、ふてぶてしい別物になる。


この映画は冒頭、香川京子が自転車に乗って現れるだけで「ああ、なんか好きな映画だな」と感じさせる何かがある。
山村聰がお父さんなので「舞姫」「山の音」*1を連想せざるおえないけど、ピリピリした感じは本作にはない。
木村功も相当なことをするし、言うが、香川さんの佇まいが映画をピリピリさせない。

*1:両方とも川端康成原作ですね