この胸いっぱいの愛を/塩田明彦

向井秀徳に「レスポール持たせたらいい音出しそうな」監督と言わしめた塩田だが、このスイッチのオン・オフは何処にあるのだろう?
それはやはり同じレスポールのリア、フロントのピックアップの切り替えなのだろうか?「黄泉がえり」はファンタジーの名目の元で我が儘さを貫き通す者たちの映画であったが、思えば「害虫」も「カナリア」も意思を貫き通す子供達の映画であって、本質的な強情さでは変わらないのかもしれない。
ただ、特に「害虫」で溢れかえっていた若い故のザラツキが、「黄泉がえり」や本作ではコーティングされており、一見全く別の映画のように見える。
しかし、どちらも登場人物がひたすらに我を通そうとする映画だった。カナリア [DVD]



死を介在させて語る純愛に批判の声が出だした「セカチュー」界隈だが、今「黄泉がえり」をその純愛ブームの発端として語ろうとし、同様のスタッフで二匹目のドジョウを得ようとするのは理解出来る。
結局この映画はその目論見をいまひとつ数字的に達成出来なかったといえようが、本作はこの手の映画はファンタジーであったことを思い出させることに成功している。
絵空事であることに自覚的だからか、妙にリラックスしている。
神妙な顔をして見るより、顔をほころばせながら見たい。黄泉がえり [DVD]




それにしても映画の中で物語が言葉によって語られすぎではないか?
多くの大切な局面は観客の見えぬ内に終了し、何か上手くいっている結果ばかりが提示される。
こうなってくるともはや映画でこの物語を語ることにあまり意義を見出せなくなる。
何より、タイムスリップ組の動揺が、余りに描かれていなさすぎではないか?


異様に辛口で書いてますがね。。
現役カンクローのクドカンと元カンクローの中村勘三郎の共演は嬉しい。
ていうか、クドカン、やせすぎ、大丈夫か??
してクドカンとは「僕の魔法使い」で繋がる伊東英明。
この人はあれ以来、何やってもふざけているようにしか見えなくなってしまった。。。
あと、意外にミムラが肉感的であったことと、ヴァイオリン結構練習してそうだった(さすがに音は吹き替えだったようだが)ことは発見であった。