ウォーク・ザ・ライン・君につづく道/ジェームズ・マンゴールド


ジョニー・キャッシュについては「レコード・コレクターズ 2006年 04月号」の萩原健太さんが流石な文章を寄せているので、それを参照のこと。
ディラン・ファンの私だけど、宣伝や映画の中で「ディラン」の名が飛び交うのに冷めるのです。
キャッシュは彼単独でアメリ音楽史に残る、素晴らしい歌い手である。
で、映画自体はどうしても「Ray / レイ [DVD]」を思い出す感じ。
っていうか、50〜60年代に新しい大衆音楽を開拓したスターというのは、大体辿る物語が同じにならざるおえない。
幼年期のトラウマ→若き天才→大成功、スター街道まっしぐら→ドラッグ中毒→離婚→内なる魔との戦い→再起。。。
そんな感じか?
途中で命を落としたのがヘンドリクスやジャニスやジム・モリソンだったわけだ。
悲劇の60'Sヒーローの物語も正直飽きたが、この「生き残ったスター達」のパターンも早々に飽きそう。
本作においては、キャッシュの抱える内なる葛藤、恐ろしさの表出をより強調した演出をすれば、より印象的な作品になっていたかもしれぬ。
そこは本人達が製作に関わっていたから不可能だったのか?それとも監督の演出の技量?
ホアキン・フェニックスはその物語も演じきることが出来る器、とは思ったのだが。
「レイ」では私はジェイミー・フォックスの物真似芝居が非常に嫌だったのだが*1ホアキンリース・ウィザースプーンの“似ることを諦めた”演技には好感。
反対に両者の“似せようとしている歌唱”も微笑ましい。
音楽監修はまたもTボーン・バーネット、幽玄なギターのサウンドはもちろんマーク・リーボーである。

ウォーク・ザ・ライン~君につづく道

ウォーク・ザ・ライン~君につづく道


で、キャッシュ初心者には、映画本編で流れる曲の幾つかも収録したベスト

エッセンシャル・ジョニー・キャッシュ

エッセンシャル・ジョニー・キャッシュ

映画に出てくる刑務所ライブを収録したのは
アット・フォルサム・プリズン

アット・フォルサム・プリズン

個人的にはこれが好き。
“カントリー”ってだけでなめてる奴にはこれとエミルー・ハリスの近作を聞いてほしい。
American III: Solitary Man

American III: Solitary Man

*1:あれにアカデミー最優秀主演男優賞が与えられたという事実は、「演技」というものの価値観を大きく左右するものである。では、原口あきまさ明石屋さんまのまねをすれば「素晴らしい演技」なのか?コージー冨田タモリの真似をすれば「優れた演技」なのか?役者としてのジェイミー・フォックスの素晴らしさは「コラテラル」「ジャーヘッド」で承知の上で。