スパニッシュ・フライ/ルー・リード


やっと国内発売された2004年8月のルーのライヴDVD。
まず私は2004年フジロックに行っていない不届き者なのです。
だからその時のセットに近いこのライブの製品化は正直いってこのDVD化はかなり嬉しい。


2003年の来日ツアーは曲目から考えて、「NYCマン ヒストリー・オブ・ルー・リード 1967-2003」を補完する選曲だったのではないかと思った。「ベルリン」から「NYCマン」未収録曲をやったり、「Tell It To Your Heart」や「Set The Twilight Reeling」等同未収録の名曲やったり。それにファンサービスの幾らかを交えた公演曲目だったと思う。
例えば「今やりたい曲をやる」ってだけならディランのように毎晩演目が変わって当然なはずだけど、かたくなに来日中は同じ曲目だったし。何らかの選択肢から厳しく生き残った曲だったんでしょう。
来日とほぼ同じ演目のライブ盤は「アニマル・セレナーデ」。


で、このDVDの内容ですが。
1曲目が「Modern Dance」!!「エクスタシー」で一番好きな曲ですー。
多分ルーの全キャリアの中でも最も詩の響きの美しい曲ではないかと。
韻とか神がかっていて、しかも完全に意味を成している。
この曲聴くといつもローリー・アンダーソンを思い出す私は俗っぽいですか?
とりあえず、この曲、意味とか全然判らなくても言葉の流れるような響きだけで聴く者の心を捉えるだけの強度を持ってると思う。
次の「Why Do You Talk?」はスタジオ録音が発表されてないオペラ「タイム・ロッカー」用の曲。こういう挑発的な詩なのに穏やかな曲のルーの声は凶悪。アウトロが強烈。
フジと三日前のイタリアでやってた「Magic And Loss」をやってないのが悲しいけど。
「Venus In Furs」。この日のチェロのジェーン・スカルパントーニのソロは不完全燃焼。2003年来日の東京1日目のソロはこんなもんじゃなかったです。あと「アニマル・セレナーデ」のもミックスの具合のせいかもしらんけど、より強烈。そうそう、この「スパニッシュ・フライ」、DVDのくせにCDの「アニマル〜」より音がちょっと劣るのが気になる。。。
「Sweet Jane」はファンサービス。この日のよりDVD「レイター:レジェンド」収録の重々しいヴァージョンがオススメ。
「Jesus」はヴェルヴェッツの3rdにひっそり入ってた曲。確かルーは最近ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマとこの曲をレコーディングした、というニュースをみた気がするんだけど…定かでないです。この曲なんかはアントニーが欲しかったところ。
はい、次がまた大好きな「Romeo Had Juliette」!!
ここらからバンドは本調子。これがベストトラック。
「I wanna take you higher!」とか突然絶叫するルー様、手に汗握る。
彼はスリーコードくらいの簡潔かつ最高なR&Rリフを沢山生んでるけど、これもその名曲群の一つ。それと、ロミオとジュリエットを題材にしたものでこんなにロマンチックでなく、ヒリヒリした創作を他に知らない。
「Satellite Of Love」。2003年はやらなかった曲。
ライブでやるとソウルバラード風になるのが素敵。フェルナンドのコーラス、ジェーンのフレーズは今までのライブではおおよそ省略されていた。でも「ア・ナイト・ウィズ・ルー・リード [DVD]」で聴けた痙攣みたいなロバート・クワインのソロが懐かしいな、この曲は。合掌。
「Ecstasy」は途中で剃刀みたいなルーのソロが入る。これを来日で初めて生で聴いたときは鼻血出るかと思った。これがルーの表現なんだな、と音だけで納得させた。
リフも歌詞もエロい感じがあって好き。
このDVDのソロは終わり方がいまひとつで、苦笑いするルーが見れます。
次は問題の「The Blue Mask」。フジではボロボロだったそうですが。
んー、この曲がライブで上手くいってるの聴いたことないんだよなー。。。
スタジオヴァージョンがかっこよすぎるからか?どなたか、この曲が上手くいってる公演のブートなんか知っていたら教えて下さい。
究極にサディスティックな名曲だと思うんだけど…スタジオ盤はね。
多分言葉が多すぎるのかな。このDVDのも、ルーが一通り歌詞を吐き出し終えてジャムりだすとだんだん白熱してくる。
「Perfect Day」。
私はこの曲が運命の曲で。この世で一番好きな曲は何ですか、と聞かれれば即答で挙げるんです。それくらい好きな曲。だからトレスポには腹が立った訳です。
だから問答無用です。ドクター・ジョンが歌おうが、アントニーが歌おうが。
「Walk On The Wild Side」はおまけ。ファンサービス。
怒られるの覚悟で、この曲はあの1972年に録音されたあのテイクが素晴らしい訳で、「Perfect Day」や「Sweet Jane」のような曲としての強度を持ってないという気がして仕方ないんですね。だからルーのライブでいつも懐メロのように浮いてしまう。正直いって。
スタジオ盤は大好きです。勿論。


正直な感想を色々書いてみました。
私は解説書いてる大鷹俊一さんとは意見が違って、このカメラワークはフェス中継をそのまま収録したみたいな荒さに思えて仕方ありません。
そういうことを抜きにすれば、演奏の極上の味わいと荒さとを同時に楽しめる貴重なDVDです。
迅速な過去のビデオ作品群のDVD化とPV集の製作を望みます。