男はつらいよ・寅次郎相合い傘


マドンナリリー=浅丘ルリ子。ゲスト船越英二
寅の夢想は海賊。前田吟が鞭打たれるサービスカット??あり。
北海道、ボールペン、メロン事件、長万部の浜辺で戯れる三人のシルエット。


映画館を出る寅さんが受付のおばちゃんに「おばちゃん、面白かったよ」と声をかけるだけでグッときてしまうのだが。
本作はシリーズ中の特殊な位置に存在し、リリーは寅さん唯一の恋人、であると思う*1
マドンナ達はマドンナであって恋人ではないけど、リリーはマドンナとまた異なる。
二人の微妙な関係は毎度の一方的な寅さん流恋愛と趣が異なり、切ないリアリズムが溢れる対等の関係にある。
その感じ、なんだか泣けてしまう。
相思相愛なはずなのに、男女の関係には至れない、至ってはいけないと心に決めた関係。
身に覚えがありませんか?関係に至った時にそれ以前の相思相愛が消え去ったことは?
リリーはそういう過去を一杯知っていて、寅さんは*2気が良すぎる。
この寅さんの女を知らないダンディズム、日本男児特有ですね。
本作終盤でリリーの申し出を冗談と誤魔化してしまった寅さんはもうどんな女性とも結ばれることはないだろうな、と匂わせる。
おそらく今後誰かと結ばれそうになったとしても、必ず寅さんは「俺と一緒になるより彼女にはもっと幸せになる道がある」と考えるだろう。
つまりここに、このシリーズが永遠に続く可能性と、もはや寅の恋が完結することはないからシリーズは成立しないという可能性、両方が表出しちゃっているわけ。


浅丘ルリ子はあまり私の好きな顔の感じじゃないんだけどリリーさんは毎度すごく魅力的。
冷え性なの、とか言って男の布団に潜り込むのにヤな感じが全然ない。
私は舞台がとらや以外の時間が多い作品*3はあまり成功してると思えないんだけど、リリーさんがいることで本作前半の北海道ロケにも親密さが生まれている。
船越英二の初恋の人に関するエピソードの切ない。
その後の港での寅とリリーの口論も、とらやでの再会の抱擁も、メロン事件の口論も、二人の相合傘も、グッときてしまう。


夏場なので私の好きな倍賞千恵子のミニスカ姿が沢山見れる。
一作目からずっと気になる桜の洋服。今観てもいちいち可愛い。
それにしても宮崎アニメのヒロインに於ける桜の影響、絶大。ハウルなんてそのまんま。
そして前田吟はココリコ遠藤に似てる。

*1:シリーズ全作観たわけではないので恐縮ですが…

*2:私の「寅さん童貞説」が本当だったなら

*3:例えば第3作