SAYURI/ロブ・マーシャル


なんとなくこれが新年第一本目に相応しいだろうとの判断で、年末スルーしていた。
特に内容に期待はしなかったし、もちろんアメリカ人がどれだけ日本・芸者の世界を描けるか/描けないか、も、全く興味が無い。
ただただ、チャン・ツィイーの芸者姿とアジア圏女優の豪華な共演でおなか一杯になりたかっただけ。
チャン・ツィイーの敵役がコン・リー、というだけでもかなり下世話な好奇心が沸々してくるのだけど、さらに監督が「シカゴ」の人、ってことはあのゼタ・ジョーンズみたいなわっかりやすいヒールにコン・リーが?という全く個人的な盛り上がりがあった。
チャン・イーモウに見切りをつけた(かどうかは知らんけど、パートナーシップを辞めた)後、コン・リーチェン・カイコー筆頭に色んな監督と組んだが、捨てられた(かどうか知らないが)チャン・イーモウは新たにヒロインを見出した、それがチャン・ツィイーだったわけで。
しかも、その初コンビ作「初恋の来た道」が、それまでのどのイーモウ作品よりメジャーな知名度を獲得してしまったから。
コン・リーの胸中たるや。
だってこのサユリ役、15年前なら確実にコン・リーがやっていた役だもの。


元々リアリズムとか話の整合性とか辻褄なんて、この映画が考慮してる訳が無いので、そーゆーとこで小言を言ってる方は最初ッから見ないで下さい。
多分、自腹で御鑑賞になられる某監督さんなんかは、こういう映画をネタにしてこき下ろすの、大好物ではないでしょうか?
ロブ・マーシャルはリアルを超越した、ショーのような映画が撮れるっつーことで起用されたのでは?と思う。
製作陣も端から本格的な「日本文化を忠実に再現した映画」や、「丁寧な物語運びで泣かせる映画」なんて作る気無かったでしょう。
それらを目指すなら別の人を起用するはずだ。
だからわっかり易い、ゲームみたいなサクセス・ストーリーを絢爛豪華なプロダクションにうっとりしながら楽しむのが正解。
そうすれば、桃井かおりの漫画みたいなキャラ芝居も許せるというもの。
この役、夏木マリ・ヴァージョンとか、見たい。


で、私の視線はもっぱらコン・リーに釘付けなんですが。
いい感じに歳とってますね。美しい。イヤーな感じも凄くあって。
私はこの人を眺めるだけで満足してしまう。
酷く着崩れセクシーな彼女の着物の着こなし(?)は椎名林檎を彷彿とさせる。
彷彿とさせるといえば、ツィイー嬢とその幼き日を演じた大後寿々花の表情が、時に全く同じに見えることがあった。
どっちが歩み寄ったのだろうか?
ロブ・マーシャルはプロデューサーの期待通り、女同士のぐちゃぐちゃしたイザコザをヤーな感じで描くのに成功。
そしてコン・リーは私の期待通りの強烈な敵役を全う。
最悪に着崩れた彼女が炎の中で、後輩・チャン・ツィイーと掴み合いの喧嘩、放火の件は凄まじくて、ずっとニヤニヤしてしまった。
ここだけで私はもとをとった。


さて、コン・リーの次回作はチャン・イーモウとの10年振りのタッグとのこと。
期待。