ジャーヘッド/サム・メンデス


映画が戦争を題材にした瞬間から、本作中で上映されて兵士たちの士気を高める「地獄の黙示録」以降のヴェトナム以後の戦争映画に至るまで、例え反戦を訴えようとも戦場を舞台とした映画はすべからく、戦闘の高揚・カタルシスを観る者に与える。
殺戮が無意味なもの、と作家が訴えようとしている、していないに関わらず、映画の中で人は死に、人を殺す。
本作はそのカタルシスを、観る者にも登場人物にも与えない。
「待つ戦争」として描かれる湾岸戦争、その現場で主要人物達は誰一人殺すことが出来ない。
戦争映画のカタルシスがない。
それがこの映画の面白いところで、後日談は「人を殺そうが殺さまいが戦争はその後の人生に…」云々ではなく、戻ったところで何も変わらない、ということなのではないかと感じた。
戦場で最後の最後に人を殺すことが出来なかった主人公の相方は、ドラッグ・ディーラーという日常に戻り、絶命する。
戦争に行こうが行くまいが、命の軽さに変わりは無い。
相変わらず、ジェイミー・フォックスは旨いなぁ。
ジェイク・ギレンホールは時々、苦しそうに歌っている時の山崎まさよしに似る。


エンディング・テーマとして使われるのはトム・ウェイツ「兵士の持ち物」。ソードフィッシュトロンボーン
アイランド移籍後初のアルバム「ソードフィッシュトロンボーン」(1983)収録。
また、予告編でフューチャーされたカニエ・ウエストの「ジーザス・ウォーク」はエンド・ロールでインスト・ミックスが流れる。