男はつらいよ・寅次郎あじさいの恋/山田洋次


マドンナいしだあゆみ、ゲスト片岡仁左衛門柄本明
寅の夢はスズメのお宿、っていうかもはや夢ではなく完結したお話となっており、寅が目覚めるショットも無く、寂しい。
ロケは久々の京都、今と変わらぬ鴨川の風景。
そこで出会った老人を貧乏老人扱いしてたら本当は…という展開は、19作「寅次郎と殿様」に大いにかぶり、いまひとつ。
だが、丹後に戻ったいしだの元を訪れる辺りから、今までのシリーズ作ではなかなか味わえない男女間の緊張感に満ち始める。
ついに寅さん、一夜の過ちか?といった緊迫。
その後、東京での逢引は鎌倉の紫陽花咲く寺で、それもなんとも粋で。
私は本作の後半は大好きだ。


「今日の寅さん、何か違う人みたいやから
 私が会いたいなと思ってた寅さんは、もっと優しくて楽しくて、風に吹かれるタンポポ の種みたいに自由で気ままで、
 せやけど、あれは旅先の寅さんやったんやね」


あの瞬間のあの感覚が、もはや消え去ってしまったことに気付く、悲しい再会よ。