ヨコハマメリー/中村高寛


都市伝説的な、謎解き系のドキュメンタリーかと思ったが違った。
まっとうで、とても興味深く、面白い、映画であった。
異形のメリーさんが背負っていたものは歴史という切り口で語れる。
というよりも、彼女を媒介に歴史を語りたくなる。
しかしそれ以上に、この映画で印象に残るのは永登元次郎というゲイのシャンソン歌手との友情であったり、メリーさんを顧客として接していた伊勢佐木町の商売人の人たちとの交流であったり。
人がみえる、映画であった。
それは歴史からはみ出した、零れ落ちたものたちの個人史であり、表に出ることの無い裏街道の物語である。
終盤の件は観るものの涙をさそう。
清水節子が撮影した94年当時のメリーさんのフィルムが発見されることを望む。