1.CAT WAS DEAD

記念すべき1stの1曲目、歌いだしが「猫が死んだ/僕の大事にしていた仔猫が」という衝撃。
ベンジーの詩作に慣れてしまった今となっては判りにくいが、ここで初めて耳にした人には衝撃以外の何物でもないだろう。
それも捻って、露悪的に出してきた言葉ではなく、あくまで必要な自然な歌詞として歌われている衝撃。
上に書いた、強面のヴィジュアル、その中身が「大事にしていた仔猫が」死んで「どうして悲しいんだろう/涙が落ちてゆく/寒い空の下」。
昔から(?)不良といえば、純粋さを持っているがゆえ、のように語られ(描かれ)ているし、おそらくそういうイメージって永遠なんだろうけど、ここでさっぱりとその純粋さを曝け出してしまう、ある意味では無防備さ、おそらくはそれすらも純粋さ。
こういった部分がブランキーが多くの人に支持された所以だと思う。
ベンジーの歌詞の特徴的な要素として、ここで既に見受けられるのは、「解決しなさ」だろう。
後々の曲では歌詞の後半にオチやら結末が待っている場合があるが、いずれにせよ、歌われている感情に解決はない。
この歌の「僕」も、どうして悲しいのかを自問するのみで、それになんら答えや決着を付けることはない。
様々な人間の感情や世界の不条理やらを題材にしつつも、そう簡単に解決させることなく次の感情や生活に流れていく。
ベンジーの歌詞/ブランキーの魅力を語る上でこの辺りも無視できないと思う。


挑発的で重厚なイントロから軽やかで切なげなロカビリーサウンドへ。
ヴィジュアルイメージ通りのネオロカ系のサウンドではあるが、ベンジーのグレッチは後のアルバムでの生々しさとはかけ離れた如何にも90年代初頭な音処理が(特にバッキングのコードリフ)行われており、達也のドラムもスタジオの天井で聴いている様な気になる、ミックスである。
イントロのギターソロのフレーズは既にディミニッシュの使用を交えたロカビリーリックから発展した所謂ベンジー風のスケールで成立している。


彼ら自身、始まりの歌、と認識していたかどうか知らないが、後に横浜アリーナでの解散公演最終日の一曲目に演奏され、DVD版『LAST DANCE』に収録されている。(ちなみに初日は「★★★★★★★」、フジロックでの最終ライブは「プラネタリウム」)