ヨコハマメリー/中村高寛
都市伝説的な、謎解き系のドキュメンタリーかと思ったが違った。
まっとうで、とても興味深く、面白い、映画であった。
異形のメリーさんが背負っていたものは歴史という切り口で語れる。
というよりも、彼女を媒介に歴史を語りたくなる。
しかしそれ以上に、この映画で印象に残るのは永登元次郎というゲイのシャンソン歌手との友情であったり、メリーさんを顧客として接していた伊勢佐木町の商売人の人たちとの交流であったり。
人がみえる、映画であった。
それは歴史からはみ出した、零れ落ちたものたちの個人史であり、表に出ることの無い裏街道の物語である。
終盤の件は観るものの涙をさそう。
清水節子が撮影した94年当時のメリーさんのフィルムが発見されることを望む。
安藤裕子 at SHIBUYA-AX
「Lost Child.」で彼女が流した涙は観客への感謝でも歌詞に過剰な感情移入をしてでもないと思う。
それは震えのようなものだったと思う。
あの歌詞がそうさせたのではなく、あの言葉の並びが会場を動揺させていた。
歌っている本人のみならず、あの言葉達はあらゆる者を不安にさせた後に肯定する。
相変わらずステージ上のねえやんの緊張感が観客にも伝わってしまうライブだった。
観客が様子をみてるようなこの感じ、他のソロ女性シンガーにはあまりないのでは?
中島美嘉のライブではムードを壊すくらい沢山の声援が飛び交うが、安藤裕子のライブの観客は異様に静かだ。
どっちがいいかはまあ置いといて…
二回目の参戦。
見るからに喉が強そうでないねえやん、一曲目から低音がかすれがちだったが、それが逆に色気を出していた。
にしてもいい曲多いね。
基本的に新譜Merry Andrewからの曲が多かったが、「MONDAY BABY」をやってくれたのがうれしかった。
「隣人に光が差すとき」「聖者の行進」の本編ラストの流れが壮大な広がりを持っていた。
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恋は五・七・五/萩上直子
こういった文科系学園物邦画は近年多々作られているので、どうしても比較をしてしまうものだが。
「かもめ食堂」を見たときに感じたのと同様の停滞感、いまひとつ弾けきれないもったいない印象を受けた。
タイトルからして恋愛が絡むのは映画のテーマの一つなのかもしれないが、個人的にはそういう展開が重要ではない、もしくは無いのが好き。
「リンダリンダリンダ」「ロボコン」「スイング・ガールズ」などなど。
なお、本作に関して言うと、恋愛が絡んでいる割には個々のキャラ立ちがいまひとつ弾けず、主人公たる関めぐみのみに執着することなく眼差しが分散するため、結果的に関の感情の動きも追いにくくなってしまった。
敵役のわかりやすい嫌味さ(「ロボコン」の荒川良々率いる優等生集団の憎めなさ!)はなんだか不愉快で、善悪の明確な線引きが成されており、彼らを準決勝で負かし決勝に進むことが確定した段階で映画が終わることからも、彼らを負かすことが物語の決着となっていたのだろうが、そのような二対立の構図が好かん。
もしそうするなら「オーバードライブ」並のトンデモ感を出して欲しかったところ。
プロデューサーズ/スーザン・ストローマン
今一番のエンターテイメント映画。
本作の贅沢さ、楽しませようとする心意気を前にすると、如何に多くの映画が小さく見えることか。
アメリカエンタメ特有の胃もたれはあるものの、役者たちの芸達者振りが有無を言わせない。
ブロードウェイキャストの主演二人は兎も角、ウィル・フェレルとユマ・サーマンがこんなに歌って踊れるとは思わなかった。
ゲイ役の人たちの徹底振りはもはや感動を呼ぶ。
ただ一つ苦言を言えば、“まともな人”が一人もいないことで全体ががちゃがちゃしすぎな印象を持ったということだが、まあ、んなこた余計なお世話というところだろう。
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ナイスの森・The First Contact/ナイスの森
多大なる映像の消費・浪費。
ここまでくると畏敬の念を持つ、偉大な無駄。
可愛い女子を眺めるための映像として、私には機能した。
特に主演ともいえる西門えりかは今後要チェック。
君とボクの虹色の世界/ミランダ・ジェライ
ポスト・ソフィア・コッポラとか言われているようだが、ソフィアよりミランダの方が語り口が流暢。
私はソフィアの映画を観る度に「写真家が撮った映画」って印象なので。
対人関係に不器用すぎる人間達の群像劇ということでいうと、トッド・ソロンズの「ハピネス」を思い出させる。
ガーリーでポップな映像(「ロスト・イン・トランスレーション」なカットも)とデザインもいいが、明日に希望を持ちたくなるような感覚を与えてくれる後味が何より一番の美点。
Me and You and Everyone We Know
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